ネットやSNSで「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」という言葉を見かけることはありませんか?このセリフは、「鋼の錬金術師」で登場したキャラクターが放った言葉です。今回は、「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」のセリフが生まれた経緯について見ていきましょう。
目次
『鋼の錬金術師』とは
鋼の錬金術師は、「ハガレン」の愛称で親しまれている大人気少年漫画です。ここからは、鋼の錬金術師の概要やあらすじを紹介します。
『鋼の錬金術師』の作品概要
鋼の錬金術師は、荒川弘先生によって、2001年8月から「月刊少年ガンガン」で2010年7月まで連載されていた作品です。原作漫画は、通常版が全27巻でカラーページを導入した完全版が全18巻で発売されています。
「Fullmetal Alchemist」というタイトルで英語版の漫画も発売されており、完結後も日本だけでなく全世界で人気の作品です。2021年時点では、シリーズ全体の全世界累計発行部数は、8,000万部を超えています。
この記録は鋼の錬金術師の出版元である「スクウェア・エニックス」から発売された漫画で、歴代最高記録となっています。完結後10年以上経っていますが、この記録は未だに抜かれていません。
さらに、最終回が掲載された月刊少年ガンガンは、通常よりも多く発行されていましたが、即完売してしまい、翌々月の号では再び最終回が掲載されました。鋼の錬金術師が連載を終了した際には、月刊少年ガンガンの売上が著しく落ちてしまったことから、圧倒的な人気であることが分かります。
2003年10月からは、全51話でアニメ化がされました。この時点では、原作漫画が完結していないため、原作とは異なるストーリーが展開されています。その後劇場版で、アニメの最終回の続きが描かれた「劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者」が公開されました。
2009年4月からは、原作漫画のストーリーを描いた「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」が放送されました。その後も、2017年には実写映画化、2023年には舞台化がされています。
『鋼の錬金術師』のあらすじ
鋼の錬金術師は、19世紀のヨーロッパで錬金術師がいる世界線を舞台としており、連載当初はダーク・ファンタジーのジャンルとされています。
鋼の錬金術の作中では、錬金術師として生活をするエドワード(通称:エド)と鎧の身体になってしまった弟のアルフォンス(通称:アル)が中心に物語が進んでいきます。錬金術とは、価値のないものを価値の高いものに作り替えることです。
錬金術を生業にする錬金術師には、作り替えてはいけないものが存在します。それが「人間」および「人体」です。人体錬成は、錬金術師の間で禁忌とされています。ですが、エドとアルは幼い頃に死亡した母を生き返らせるために、人体錬成を行おうとします。
母に会いたいという一心で、兄弟は恐ろしい禁忌を犯してしまったのです。結果として、人体錬成は失敗して母を生き返らせることはできず、兄のエドは左足、弟のアルは身体を失いました。エドは身体を失ったアルのために、自身の右腕を犠牲にして、アルの魂を鎧に定着させます。
エドとアルは、人体錬成によって失ったものを元に戻すために、錬金術の効力を上げることのできる「賢者の石」を探すことにします。賢者の石を探す旅の中で、エドとアルはさまざまな人と出会い、世の中の真実を知ることになったのです。
「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」とは
ショウ・タッカー1択#コイツ道徳ねえわ pic.twitter.com/7PVhjRYBcG
— KUNA_YASO (@kunayaso) June 15, 2021
ネット上で度々目にする「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」とは、鋼の錬金術師で登場するセリフです。ここからは、セリフの詳細について見ていきましょう。
2巻5話のショウ・タッカーの台詞
「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」という台詞は、鋼の錬金術の原作漫画2巻の5話に登場したものです。この台詞を言ったのは、ショウ・タッカーという人物で、錬金術の研究についての書物を借りるために、エドとアルは、ショウ・タッカーの家を度々訪れていました。
ショウ・タッカーが隠していたことに対して、真実に勘づいてしまったエドが、核心をついた質問をした時に、「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」と返しました。
ショウ・タッカーとはどんな人?
ショウ・タッカーは、原作漫画2巻の5話で初登場し、合成獣いわゆるキメラの錬成が評価されて、国に認められた国家錬金術師となりました。優れた錬金術師が持つ銘は、「綴命(ていめい)」とされ「綴命の錬金術師」とも呼ばれています。
ショウ・タッカーの見た目は、細身の体型で少し小柄で、性格は控えめで優しそうな雰囲気で悪者らしさはありません。エドと初めて会った時には2年前に妻が蒸発し、幼い娘と犬と一緒に暮らしていました。
何度も国家錬金術師の試験に落ちており、妻が励ましていたことも明らかになっています。妻が蒸発した頃に、人の言葉を理解することのできるキメラの錬成を評価されて、国家錬金術師の資格を手に入れました。
「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」の元ネタは?
鋼の錬金術師
ニーナ・タッカー
最初、嘘やろと思い、ずっと残り続けているシーン#一番印象に残ったアニメのシーン pic.twitter.com/827CZXWP4w— 柴犬メリーさん🐾 (@iCzwxllWmfytfUa) February 20, 2021
「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」というセリフは、長年使われ続けています。ここからは、セリフの前後のストーリーについて見ていきましょう。
「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」の台詞に至った経緯
父親なら家族のために国家錬金術師の査定に受かったらどうだ pic.twitter.com/9ApKVwuGGd
— アンチュビス (@Noir_way) July 9, 2020
ショウ・タッカーとエド達のとの出会いは、国家錬金術師のマスタングに、事件を解決した報酬として、生体錬成に詳しい人物の紹介を望んだことがきっかけです。その時にマスタングによって紹介されたのが、ショウ・タッカーでした。
エドとアルは、ショウ・タッカーの家にある研究の書物を見せてもらうことになりました。数日の間、ショウ・タッカーの家に出入りしていたことから、一緒に住んでいるショウタッカーの娘のニーナと飼っていたイヌのアレキサンダーとも親交を深めます。
2年前に妻は突然蒸発してしまいましたが、ショウ・タッカー達は幸せそうに暮らしていました。ですが、充実した生活の裏で、2年前に国家錬金術師としての資格を手に入れて以降、実績を上げられず資格剥奪という窮地に立たされた状況だったのです。
何度も国家錬金術師の資格に落ちており、苦労して取得した国家錬金術師の資格剥奪の恐怖に怯えており、精神的に追い詰められていきました。いつものように、エドとアルがショウ・タッカーの家を訪れると、犬と人間のように見えるキメラが現れます。
ショウ・タッカーが、自慢げにキメラが言葉を話す姿を見せました。そのキメラは、人間のように髪の毛が生えた生き物で、エドに対して「お兄ちゃん」と語りかけたことで、エドがキメラの正体に気付きます。エドが、国家錬金術師として認められた時期と妻が蒸発した時期について尋ねました。
ショウ・タッカーは、どちらも2年前と答えました。そして、エドはショウタッカーの娘のニーナと飼っていたイヌのアレキサンダーの行方を尋ねます。その問いに対して、ショウ・タッカーは自分が錬成したキメラの正体を、エドが勘づいていることを察しました。
核心をついた質問をした時に、「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」と返しました。ショウ・タッカーが、国家錬金術師の資格を手に入れた時に錬成したキメラは蒸発した妻だったのですさらに、資格剥奪に怯え、ショウタッカーの娘のニーナと飼っていたイヌのアレキサンダーをキメラにしてしまいました。
娘のニーナとイヌのアレキサンダーでキメラを錬成
わたしの中でいのちの輝きくんのイメージはハガレンのキメラで固まってしまった pic.twitter.com/67A5AIk9rY
— すーか。 (@shu_bass930) August 25, 2020
ショウ・タッカーは、人の言葉を理解し、会話をすることの出来るキメラを錬成したことから、国家錬金術師としての資格を手に入れて、娘と飼い犬と幸せに暮らす優しい父親のように見えました。
ですが、国家錬金術師の資格を保有し続けるためには「査定」をクリアしなくてはなりませんでした。ショウ・タッカーは、2年前にキメラを作り出して以降は、目立った研究成果をあげられていません。
国家錬金術師の査定をクリアするためには、2年前のキメラを超える研究成果を残さなければいけなかったのです。そのため、ショウ・タッカーは、かなりピンチの状況でした。
そこで目をつけたのが、娘のニーナと飼っていたイヌのアレキサンダーです。この1人と1匹を錬成することで、さらに能力の高いキメラを作り出すことが出来ると考えました。
父のショウ・タッカーの身勝手な考えのために、娘のニーナと飼っていたイヌのアレキサンダーは、キメラにされてしまいました。エドが、ニーナとアレキサンダーが居なくなっていることに気付いたことで、ショウ・タッカーが家族をキメラにしていたことが明らかになります。
ショウ・タッカーは妻もキメラにしていた
トレンド入りしてる「コロシテ…」の元ネタがわからん。鋼の錬金術師のショウ・タッカーの妻のセリフ説があるけど、あれは「死にたい」だったしな…。 pic.twitter.com/DE7nx0wcha
— タケルさん (@Redworks_) August 25, 2020
エドの洞察力から、ショウ・タッカーが、娘のニーナと飼っていたイヌのアレキサンダーをキメラにしていたことが明らかになりました。2年前に蒸発してしまったとされた妻も、その時にキメラにされていたのです。
ショウ・タッカーは、2年前まで何度も国家錬金術師の資格を何度も受けており、試験に落ちています。試験に落ちて疲弊するショウ・タッカーのことを妻は、何度も励まし続けました。そして、妻は「なんでも言ってね、力になるから」と優しい言葉をかけてくれたのです。
妻の言葉は、夫を元気付けるための何気ない言葉だったはずです。それなのに、ショウ・タッカーは妻の言葉を自分の都合の良い意味で捉えてしまったのでしょう。
2年前の妻とショウ・タッカーのエピソードは、本編では語られていません。2017年に公開された実写版の特典として配布されていた「鋼の錬金術師 0巻」で確認することができます。
何度も国家錬金術師の試験に落ちている夫に、愛想をつかして妻は出ていってしまったとしていますが、本当は妻を錬成のために利用していました。
キメラにされてしまったショウ・タッカーの妻は、「死にたい」と話しました。その後は、食べることをせずに、静かに自ら死を選んだのです。ショウ・タッカーが目的のためなら手段を選ばない人物であることが分かります。
「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」はネットでも使われている
君のような勘のいいガキは嫌いだよtシャツ⁉︎⁉︎⁉︎ pic.twitter.com/Fi0Ld9e5n2
— れしぃと (@resxi_to) September 6, 2023
ネットやSNSでは「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」というセリフが度々使用されています。ここからは、このセリフの使われ方について見ていきましょう。
ネットでの使われ方
『脱いだチョコ どこに行った?』
『……君のような勘のいいガキは嫌いだよ』 pic.twitter.com/bhNxkFCBKW
— 瀬上あきら (@hirenmaru) September 6, 2023
ネット上では、度々ショウ・タッカーが放った台詞が使われることがあります。少ない情報で真相を察することの出来たエドに対して、ショウ・タッカーが「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」というセリフを言ったことが元ネタです。
ネットやSNS上では、この台詞を情報の発信者にとって都合が良くないことを、少ない情報を元にして核心をついてくる相手に使います。また、嘘をついた人や不祥事を起こしてしまった人が、指摘された時にも使用していました。
鋼の錬金術師の原作漫画やアニメでこのシーンが放送されたのは、10年以上前のことですが、今でも人々に使われている名言です。それほど印象深いシーンであったことは間違い無いでしょう。
「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」ショウ・タッカーとニーナのその後
鋼の錬金術師1期(2回目) 6話視聴
みんなのトラウマ、タッカーさん降臨
やあ()
ニーナとアレキサンダー、癒されるなぁ…😭
それはそうと無事国家錬金術師となったエドは、夕焼けの中、アルに改めて本心をぶつける。
いい兄弟だ。 pic.twitter.com/epukP8d9DE— カリーパン (@animekaripan) June 13, 2019
ショウ・タッカーは、人の命を利用した非人道的な実験をしていたことが明らかになりました。エドによって悪事が暴かれたショウ・タッカーと娘のニーナのその後について見ていきましょう。
ショウ・タッカーのその後
今のキッズ達はわからんと思うが、中学生ん時鋼の錬金術師の一期が当時夕方からやっていてたんだが、あれ途中からオリジナルになるからタッカーがキメラになったりロゼが暴行されて子供産んだり、エンヴィーがエド串刺しにしたりと内容エグかったんやで
もう一度いうがこれを夕方からやってたんやで pic.twitter.com/DuAX8l9Yqh
— どんぐり陸士長 (@Dongurihou) August 6, 2022
娘とイヌ、妻をキメラにしていたことで、エドとアルは激怒し、エドはショウ・タッカーを殴りました。その後、アニメ版「鋼の錬金術師」では、国家錬金術師の証である銀時計をエドに蹴り飛ばされ、その銀時計をショウ・タッカーが大切そうに拾い上げる姿が描かれています。
大切な家族を犠牲にしてでも、国家錬金術師という肩書きを守り続けたいという気持ちが現れているのでしょう。狂気を感じるほどの悪事が暴かれたショウ・タッカーは、エドとアルによって軍に引き渡されました。
2003年に放送されたオリジナルの結末を迎えるアニメ版では、軍に引き渡された後に、キメラの実験に利用され、顔面が上下逆になったキメラになっています。さらに、ニーナの姿をした肉体を作りだして登場しました。
原作および2009年に放送されたアニメでは、エド達の手によって軍に身柄を引き渡されたショウ・タッカーは、自宅で勾留されることになります。勾留中の間に、国家錬金術師を殺害しているスカーが突如現れて、スカーの思想に反するショウ・タッカーも殺しました。
また、ショウ・タッカーよりも前に、キメラを錬成している人物がいることが明らかになっています。そのため、ショウ・タッカーは非人道的な錬成を隠すための捨て駒として利用されていたとも言えるでしょう。
キメラと化したニーナとアレキサンダーのその後
アニメオリジナルの展開の2003年に放送されたアニメと原作およびアニメのシナリオ通りの2009年に放送されたアニメは、ニーナとアレキサンダーのその後が異なります。
2003年に放送されたアニメでは、ショウ・タッカーが軍に連行された時に、ニーナとアレキサンダーを錬成されたキメラは、研究施設に連れていかれそうになりました。エドがニーナとアレキサンダーのキメラを逃すことに成功しましたが、スカーに遭遇してしまって殺されてしまいました。
原作および2009年に放送されたアニメでは、自宅勾留中の間に、国家錬金術師を殺害しているスカーが、ショウ・タッカーも殺しました。キメラの姿にされてしまったニーナとアレキサンダーは、最後までショウ・タッカーの元に寄り添っていました。
ですが、キメラと化したニーナとアレキサンダーは、元の人間とイヌの姿に戻ることは不可能です。寄り添うニーナとアレキサンダーのキメラは救えないことから、その場で殺しました。エドとアルは、ニーナとアレキサンダーのキメラの死を間接的に知ることになったのです。
「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」の元ネタは衝撃的で悲しい話
今回は、ネット上でよく使われる「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」の元ネタについて紹介しました。このセリフの背景には、悲しいストーリーが隠れていたのです。詳細を知りたい方は、結末の違う2003年に放送されたアニメと原作を見比べるのも良いでしょう。